私が名古屋市立大学病院及び城西病院に勤務していた8年間は、指が切断された場合、創を閉じるだけでした。愛知医大に赴任後、ウィーンの近くの手の専門病院に留学、手の勉強をして来ました。松阪で開業してからは、私が手の専門である事を知っている医師会の先生方からの紹介もあって、多くの手を手術しております。
切断指再接着のカギは、何といっても血管縫合です。
先になればなるほど細くむつかしい、写真1は手術用顕微鏡による手術、その下は練習用の血管。
極限の状態に対処できるよう、常に練習に励み、技を磨いております。
指には、骨、屈筋腱及び伸筋腱、神経、動脈及び静脈があります。これらをすべて修復しなくてはならず、モタモタしておれません。
写真2は、母指の関節部で切断された青年の1年後、動きはやや制限されていますが、大変喜んでいただけました。
写真3は、3才の時、爪根部で切断、10年後の中学生の時撮ったものです。だっこして来たお母さんを車に乗せ、指を拾って来て手術を行いました。モミジの指の血管は、とんでもなく細く、むつかしかったが、くっついた時は、お母さんは、涙をうかべて喜んでくれました。
指が爪根部より先で切断され、血管が縫合針より細ければ、いくら手の手術のプロでも普通は諦めます。しかし、何とか元の指に近づけようと、頑張る医者もいます。左の図は埼玉手の外科研究所の平瀬先生の開発した Graft-on flap 法。
機械にまきこまれたり、プレスではさまれたりしてボロボロになってしまった指の方が来られますが「高橋へ行って良かった」と思われるように患者さんを「自分の家族」と思って、痛くないよう、やさしく、治療しております。